2011.02.28 :平成23年厚生委員会
「認証保育所の面積基準緩和」
◯早坂委員
保育サービスについて伺います。
平成二十二年四月現在の保有所待機児童数は八千五百人であり、過去最大となっています。東京都は平成二十年度から保育サービス拡充緊急三カ年事業を実施するなど、待機児童の解消に向けた取り組みを強化しています。
また、平成二十二年度からは、少子化打破緊急対策事業に取り組み、三年間で保育サービス利用児童数を二万二千人ふやすこととしています。
そこでまず、保育サービスの拡充に向けて東京都はどのような取り組みを行ってきたのか。また、今年度の保育サービスの整備見込みについて伺います。
〇角田事業推進担当部長
保育サービスの拡充につきましては、国の安心こども基金の活用のほか、事業者と区市町村の負担を軽減する都独自の支援策を行い、強力に推進してまいりましたところでございます。これにより、昨年度は、当初計画の一・五倍に引き上げました八千人という整備目標をもさらに上回る八千五百三十八人分の定員増を達成したところでございます。
今年度においても、区市町村や事業者に対しまして、保育所等の新設や既存施設の定員拡充など、引き続き積極的な取り組みを促しました結果、ことし四月には、昨年度の実績をさらに上回る整備が図れる見込みとなってございます。
今後とも、待機児童解消に向けました取り組みを進め、計画目標値の早期達成を目指してまいります。
◯早坂委員
区市町村が計画を上回るペースで保育所等を整備しているにもかかわらず、経済状況の悪化や他県からの転入による人口増などにより、東京都の待機児童数は増加しています。待機児童の問題は都市部の問題であり、かつ三歳未満の低年齢児の問題であります。
大都市東京の保育ニーズに対応するために創設された東京都独自の認証保育所制度は、待機児童の解消に大きく寄与しています。そこで、認証保育所の設置状況について伺います。
〇角田事業推進担当部長
認証保育所は、お話しいただきましたとおり、大都市特有のニーズに的確にこたえるために、十三時間開所とゼロ歳児保育を義務づけた都独自の制度でございます。平成十三年度の創設以来、広く都民の支持を得て着実に設置が進んでおりまして、平成二十三年二月現在の設置数は五百六十カ所、定員は一万八千人を超えるものとなってございます。
◯早坂委員
利用者ニーズにマッチしたサービスを提供していること、駅前などの利便性の高い立地条件などがこれだけの増設につながったのだと理解します。
では、実際に認証保育所を利用している都民の声、評価について伺います。
〇角田事業推進担当部長
平成二十一年度に都が実施いたしました世論調査では、認証保育所利用者のうち、満足と回答した方が四七・一%、どちらかといえば満足が二九・四%、合わせまして七六・五%の方に満足をいただいております。
また、平成二十一年度の福祉サービス第三者評価における利用者調査結果では、一人一人の子どもは大切にされていると思うかとの問いに、そう思うと答えた方が九二・八%、保育時間の変更は保護者の状況に柔軟に対応されているとのお答えが八二・三%など、利用者から大変高い評価を受けております。認可保育所と比較いたしましても、全十五項目の評価項目のうち十三項目において、認可保育所より高い結果となっております。
◯早坂委員
認証保育所は都民に高く評価されています。
ところで、先日の予算特別委員会の代表質問で我が党から質問しましたが、東京都は現在、認可保育所の設備、運営基準について検討しているとのことでありました。現在、国会で継続審議中の地域主権改革一括法案では、認可保育所を含む児童福祉施設の設備、運営基準について、都道府県などが制定する条例に委任されることとなります。国会の審議状況は流動的ですが、可決されるとすぐにでも条例を制定する必要があり、事前に検討を進めておく必要があることから、東京都は児童福祉審議会に専門部会を設置して、保育所の設備、運営基準の中でも面積基準を中心に検討していると伺っております。
そこで、なぜ面積基準について検討しているのか伺います。
〇角田事業推進担当部長
地域主権改革一括法案による条例委任については、三つの類型がございます。従う
べき基準と標準と参酌すべき基準の三つでございます。
詳細は政省令で明らかとなりますが、居室面積基準は、このうち従うべき基準とされております。しかしながら、保育所の居室面積については、特例的に東京等の一部の地域に限り、待機児童解消までの一時的措置として標準扱いとする旨のただし書きが付されました。これは、合理的な理由があれば、面積基準の緩和を許容するという趣旨でございまして、その背景には、国も看過できない大都市東京の極めて深刻な待機児童の現状があるものと考えます。
冒頭でもお答えしましたとおり、保育所等の施設整備をこれだけ強力に進めましても、待機児童は減らないというのが現実でございます。認可外保育施設を利用している児童もふえてきております。まさしく待機児童対策は揺るぎない猶予もなき課題でございます。面積基準の緩和は、待機児童解消に向けたさらなる取り組みの一つとして考え、現在検討を進めているところでございます。
◯早坂委員
具体的には、面積基準はどのように認定する考えなのでしょうか。また、それについて、これまで二回開催された東京都の児童福祉審議会専門部会の中ではどのような意見が出たのか伺います。
〇角田事業推進担当部長
一月二十七日に開催いたしました第二回専門部会におきまして、ゼロ歳児、一歳児の居室面積について、現行認可基準と同じ一人当たり三・三平米とする、ただし、国が指定する地域において、事業者が年度途中に定員の弾力化を行う場合には、一人当たり二・五平米とするという考え方をお示しいたしました。
専門部会の委員からは、待機児童を一人でも多く入所できるようにするべきであるといった意見や、認証保育所が十年近く支障なく運用されてきた実績は大きい、認証の実績を考えれば、二・五平米まで緩和しても問題はないといったご意見が出される一方で、現行基準の範囲内でもまだ取り組めることはある、あるいは面積基準を緩和しても、待機児童が劇的に解消するわけではないといった意見も出されております。
◯早坂委員
面積基準の緩和によってどのような効果があるのか伺います。
〇角田事業推進担当部長
基準緩和の効果についてでございますが、施設を新設する場合に比べて即効性があり、毎年変動する地域の保育ニーズ等に応じて、既存施設をより柔軟かつ有効に活用できるものと考えます。
とりわけ、待機児童が最も多く問題が深刻な一歳児については、既に最低基準に近い水準で施設が運用されている実態にございますので、面積基準の緩和によってさらなる弾力的受け入れが可能となると考えております。
◯早坂委員
保育の実施主体である区市町村にとっては、面積基準の緩和はどのような意味を持つのか伺います。
〇角田事業推進担当部長
都が定める基準は、あくまでも最低基準でございます。すなわち、最低限確保すべき基準でございまして、具体的な運用と施策展開は、現行と同じく保育の実施主体である区市町村が地域の実情を踏まえて主体的に判断し実施するものでございます。
面積基準の緩和は、区市町村にとって、待機児童解消に取り組む上での選択肢がふえ、地域の実情に応じて工夫をする自由度が広がるものでございます。地方分権の考え方からも、区市町村のそうした多様な取り組みを支援するため、区市町村の選択の幅を広げることが広域自治体としての都の役割であると考えております。
◯早坂委員
面積基準の緩和が保育の質の低下につながりかねないという意見もあります。ご見解を伺います。
〇角田事業推進担当部長
保育の質につきましては、居室面積などの物的環境だけでなく、保育従事者の資質
や保育内容などを総合的にとらえて判断されるべきものでございます。とりわけ、保育従事者の資質が重要であると考えます。
そのため、都は、これまでも保育の質の向上に向けて各種研修の実施、保育人材の確保など、最大限に取り組んでまいりました。また、さきに提示をいたしました年度途中での二・五平米までの弾力化という基準は、認証保育所A型においては、制度創設以来、実施しておりまして、保育の質の低下につながるという懸念は当たらないものと考えております。
◯早坂委員
保育所の面積基準緩和について、区市町村、事業者、利用者など、それぞれの立場によって意見はさまざまでありますが、八千人を超える待機児童解消に向けて、何とかしなければならないという思いは一つであります。児童福祉審議会の専門部会では、十分な議論を行っていただきたいと思います。面積基準についての議論が今後の東京都の保育施設のさらなる拡充に向けた議論へとつながることを期待いたします。