2006.03.20 : 平成18年厚生委員会 本文
「病児保育」
◯早坂委員
病児保育についてお伺いいたします。
私が目にしたある保育園での研究発表に、親が一番涙をこぼすときという項目がありました。それによると、実に七〇%が子どもが病気になったときを挙げました。子どもを保育所に預かってもらう保護者にとって最も困るのは子どもの病気だといえます。働く母親にとって、自分の子どもが病気になった場合には、もちろんのこと仕事を休んで子どもの面倒を見たいのです。しかし、一定以上の責任を持って仕事をしている場合には、きょうだけはどうしても休めないという日が絶対にあるわけです。子どもが病気のときぐらい親が面倒を見るべきであって、病児保育なんてとんでもないという意見は、現実を直視していない建前論にすぎません。そこで、子育てと就労の両立支援の観点から、病児保育についてお伺いいたします。
病児保育の対象は、病気が回復期にあり、安静が必要で、集団保育が困難な場合となっています。ほとんどの保育所では、三十八度以上の発熱があった場合には子どもを預かりません。病気がよりひどくなる急性期であれば病院で治療を受けるべきですが、一概に何度以上の発熱だからと判断するのではなく、むしろ少しぐらいの発熱があっても、食欲、機嫌、活動性、下痢、嘔吐など全身症状が良好であれば、むしろ回復期にあると判断すべきだと、私の知り合いのドクターから伺いました。
病児保育には、医療機関併設型、保育所併設型、派遣型などがあります。医療機関併設型でもあくまで保育ですから、入院や点滴などの処置は行いませんが、一般の保育所では行わない投薬を看護師が行います。
では、まず、この病児保育に対する国の制度についてお伺いいたします。
◯都留少子社会対策部長
国制度では、児童が病気の回復期で集団保育の困難な期間、保育所などの児童福祉施設や病院、診療所等の専用スペースなどにおいて一時的に預かる事業を病後児保育と呼んでおります。このうち、病院、診療所では、病気の回復期に加え、いまだ病気の回復期に至らない場合の預かり事業、いわゆる病児保育も実施することができるとされております。事業の実施主体は区市町村であり、事業の基本となる専用室の面積や職員の配置については国が定めております。
病児保育を含む病後児保育に対する国の財政支援は、平成十七年度に従来の補助制度から交付金制度となり、区市町村に直接交付される仕組みとなりました。交付額は、受け入れ児童が四人規模の場合、年間約三百二十万円であり、そのほか改修などが交付金の対象となっております。
◯早坂委員
では、この制度の都内での実施状況と保育時間や受け入れ定員など、具体的な実施方法についてお伺いいたします。
◯都留少子社会対策部長
病後児保育の都内の実施状況は、平成十八年二月一日現在で三十七区市、五十七施設、派遣方式型一事業であり、未実施は十二区市と町村部でございます。実施方法は、国の基準を踏まえ、実施主体である区市町村が地域の実情に応じて定めております。
都内の状況を具体的にお示ししますと、受け入れ対象児の年齢は生後一カ月から小学四年生までさまざまでございます。申込方法は、区市町村に事前に登録し、利用は直接施設に申し込む方式がほとんどでございます。利用料はおよそ一回二千円から三千円となっております。保育時間の設定はおおよそ八時間から十一時間で、最長で十三時間、これは渋谷区でございます。受け入れ定員は一区市平均で六人ぐらいであり、最も多いところで品川区の二十人となっております。
◯早坂委員
病児保育は、園児四人に対して看護師と保育士がそれぞれ一人と、通常の保育所に比べて手厚い保育看護が特徴だとされています。しかしながら、私が実際に見てきたある医療機関併設型の施設では、例えば朝の時間帯は、キャンセルの受け付けと次の繰り上がった人への電話連絡など事務作業に完全に一人とられており、事実上四人の子どもを一人で見ていました。隔離室を利用する場合や、ミルクを抱いて飲ませる場合には、同様に一人が完全に動けなくなります。実際の運営には、定員四人なら三人のスタッフが必要だと私は感じました。行政からの補助金は、四名定員の施設の場合、年額三百二十万円です。ボーナスや社会保険料などを合わせれば、一人分のお給料にも足りないかもしれません。
また、季節による利用者数の変動が大きく、夏風邪、冬風邪のシーズンとそうでないとき、かなり差があります。また、子どもは容体が変わりやすいので、キャンセルが大変多いのも難点です。しかも、病児保育には専用の保育室や安静室を設けることが必須とされており、また、調理室や調乳室が病児保育専用でない場合は、その一部を調乳場として区別するなど、事故防止や衛生面においても格別の配慮が必要です。
このように病児保育は経営上大変難しい問題を抱えております。現状では、赤字を承知で、社会的使命感により実施しているところがほとんどであります。しかし、これではこの制度が広まるはずはありません。そこで、東京都はこの病児保育に対して積極的に財政支援を行うべきだと考えますが、ご見解を伺います。
◯都留少子社会対策部長
この病後児保育事業の実施区市町村も実施箇所も年々着実に増加いたしております。しかし、整備費が高額なことや需要の予測が立ちにくいなどの要因もありまして、実施状況は必ずしも十分とは申せません。
こうしたことから、都は、平成十八年度から新たに実施する子育て支援基盤整備包括補助において、改修費について必要な支援を行うこととしております。また、市町村については、同じく平成十八年度から実施する子育て推進交付金において病後児保育を政策誘導項目に組み入れるとともに、病児保育を実施する場合はさらにポイントを加算し、事業の促進を図ることといたしております。
◯早坂委員
現状では、この病児保育への取り組みは個々の施設での対応にすぎませんが、今後さらに病児保育への取り組みを広げていくには、地域での連携体制の構築が必要だと考えます。ご見解をお伺いいたします。
◯都留少子社会対策部長
病後児保育事業は、子どもの健康状態と密接に関係するため、かかりつけ医や緊急時の協力医療機関との連携が欠かせません。こうしたことから、実施主体である区市町村が地域の医療機関など関係機関とのネットワークづくりを進めていくことが必要でございます。このため、東京都は昨年六月に東京都病後児保育事業マニュアルを作成し、地域での協力体制の持ち方についてもわかりやすく解説し、事業の推進に努めてまいりました。
今後とも、実施主体である区市町村の取り組みが進むよう、積極的に支援してまいります。
◯早坂委員
今ご答弁にありましたこのマニュアル、病児保育の事業者向けマニュアルは、内容がとてもわかりやすく説明してあり、今後、病児保育をスタートしたいと思う事業者にとって大変参考になるものであると私も思います。 繰り返しになりますが、病児保育は、子どもを犠牲にして母親が就労するという制度では毛頭ありません。親子が肉体的にも精神的にもともに健康で暮らすために絶対的に必要な制度であります。区市町村とも連携し、これまで余り知られてこなかったこの病児保育の充実に全力を尽くすよう重ねてお願いをいたします。