2013.03.13 : 平成25年度予算特別委員会
「サイバー攻撃」

早坂委員

 さて、今日の私たちの生活は、高度にITに依存しています。例えば、携帯電話で通話やメールができるのは、中に入っている高性能チップのおかげですし、電車に乗るにしても、SuicaやPASMOにチップが入っている。そもそも電車が時間どおり到着するのは、ITシステムのおかげです。考えてみれば、電気、ガス、水道のみならず、ありとあらゆるものがITに依存しています。
 都庁の膨大な事務においても、もしITがやられてしまったら、理屈の上では鉛筆なめなめできる部分もあるでしょうが、現実には、ほとんどの事務がストップしてしまうだろうと思います。私たちは、ITのおかげで、人類史上最高の利便性を享受する一方で、そこに高度に依存しているゆえ、失われた場合の影響は、はかり知れないものがあります。
 昨今、世界各国でサイバー攻撃の被害が報告されています。そもそもサイバー攻撃の目的は、単に難しいセキュリティーを破りたいだけなのか、秘密情報から金銭的利益を求めたいのか、あるいは国家や企業に大きなダメージを与えたいのか。
 また、サイバー攻撃をしかける犯人は、国家なのか、個人なのか。それが国家であれば、被害の程度によっては武力行使と同じとみなし、国家の自衛権のもとで反撃することができるかもしれません。一方で、それが個人であれば、被害が極めて深刻なものであったとしても、自衛権を適用することは難しく、犯罪というカテゴリーでの対応をせざるを得ないかもしれません。犯人の追跡と特定が困難な中で、これに対応することは極めて厄介だということがわかります。
 これまでの概念ではとらえ切れない、このサイバー攻撃に対処すべきは、第一義的には日本国政府です。すなわち、自衛隊、警察庁、外務省、経済産業省、総務省など、国を挙げて、我が国民間企業まで含めた国の守りを行わなければなりません。
 東京都は我が国の首都であり、国家経営の中枢機能が集積しています。それは何も政府機関にとどまらず、銀行、証券取引所、テレビ局、空港、鉄道、電力、電話など、民間企業の集積においてもです。政府がサイバー攻撃の被害を受けた場合はもちろん、民間企業が被害を受けた場合でも、それが都民生活に大きな影響を及ぼすであろうことは容易に想像できます。
 しかし、国の責務はもちろんですが、私たち東京都議会、そして東京都も同じように、都民生活のあらゆる分野に責任を負っています。サイバー攻撃に対して、それは国の仕事だ、東京都の役割ではないとはいってはおられません。ところが、現行法体系を調べれば調べるほど、東京にある民間企業のサイバーの分野に、東京都が立ち入る権限も、また、能力も有していないという現実に直面します。
 そこで、きょうはお話をぐっと絞り、都庁という組織が、これまでどういったサイバー攻撃を受けてきたか、また、そのサイバー攻撃に対する取り組みについて伺います。
◯笠井総務局長

 都庁におきましては、昨年九月、不正アクセスの集中により、ホームページが一時的に閲覧しにくくなる事態が発生したほか、ウイルスの仕掛けられた標的型メールが送りつけられるなどのサイバー攻撃を受けております。
 都は、こうした攻撃に備え、システム面での技術的なセキュリティー対策を講じるとともに、運用面でも、職員に対する標的型メールへの対応訓練を実施するなどの取り組みを進めているほか、緊急時に迅速な対応が図れるよう、国や警視庁などとの情報連絡体制を確保しております。
 近年、サイバー攻撃の手法も巧妙かつ多様化していることから、新たに、送信元を詐称する成り済ましメールへの技術的な対策を導入するなど、さらなる取り組みの強化を図り、サイバー攻撃から都庁の情報資産を守り、都民サービスと都政の安定運営の確保に努めてまいります。

早坂委員

 サイバー攻撃に対する、国との連携強化を図ることが重要だと思います。
 サイバー攻撃の手法は、日々巧妙化しています。慶應義塾大学の土屋大洋教授によると、インターネットにつながっていなくとも、コンピューターがある限り、操作される可能性を認識すべきとのことです。それが重要なシステムであればあるほど、部品の段階で工作されてしまうことや、あるいは動作中のコンピューターに、USBでウイルスを仕掛けられることが現実にあったからです。
 このサイバー攻撃に対して東京都ができることは、まず、都庁の守りを固めることです。そのためには、何が都庁の機密情報なのかが特定されていなければ守りようがありませんし、責任も不十分です。
 既に、都庁では、機密情報に関するルールを定め、管理しているとは伺っていますが、セキュリティーを高めることは、一方で煩瑣な作業を課すことでもあります。職員一人一人がそのルールの重要性を理解していなければ、安全対策をおろそかにしてしまいかねません。より実効的な対策をお願いいたします。
 ところで、猪瀬知事の肝いりで、ツイッターでの情報発信が進められています。都民への積極的な情報発信はもちろん大歓迎ですが、一方で、成り済ましやデマ情報などのリスクもあります。必要な対策を十分にとっていただきますよう、お願いをいたします。