2005.10.18 : 平成17年厚生委員会 本文
「医療費抑制と健康づくり施策」
◯早坂委員
医療費及び健康づくり施策についてお伺いいたします。
高齢化の進行に伴い、老人医療費は増加傾向にあります。平成十五年度の国民一人当たりの医療費は平均二十四万七千百円に対し、六十五歳以上のそれは六十五万三千三百円、老人医療費は十一・七兆円で、国民医療費の約四割を占めています。そこで、今日、医療費抑制の議論が生まれています。しかし、そもそも行政が医療に介入することの根拠はナショナルミニマムの設定、すなわち、すべての国民が必要な医療を受けられるようにするという最低保障にあります。総額管理に代表される医療費抑制は、いってみれば最低保障が受けられるハードルを高くすること、つまり、お金がかかるから、軽い風邪なら医者にかからないでください、重くなってから来てください、こういうことだと私は理解しています。
国民皆保険の精神は、いつでも、どこでも、だれでもが必要な医療を受けられることにあります。風邪の場合、軽いときにこそ直すべきで、後で重くなって、肺炎になってからかかるようでは、入院も必要になるし、それこそお金がもっとかかります。お金がない人でも税金を使って教育が受けられる、これが義務教育であります。お金がない人でも社会保険を使って医療が受けられる、これが国民健康保険であります。教育も医療も行政が一切介入せず、市場の原理に従って、受ける、受けないの判断を個人に任せるという手段もありますが、しかし、基礎的な読み書きや最低限の医療を国民全体が共有することにメリットがあるという社会的な合意のもとに、これを現在強制していると私は思います。
つまり、義務教育も国民皆保険も、その成果は個人に帰属はいたしますけれども、すべての国民がそのメリットを受けるということによって、社会全体に大きな利益が還元されているということで成り立っているわけであります。現在、義務教育は小学校、中学校の九年間ですが、これを、国家財政が逼迫しているので、例えば中学校には自分のお金で払える人だけが行ってくださいということと、現在の理論は同じことだと思います。
総額管理、医療費抑制の議論は極めて慎重に行わなければならないと私は考えています。予防にまさる良薬なしといわれます。つまり、病気にならないよう常日ごろから健康管理をしておくことが最も有効で、最も安上がりな方法であります。特に、死因の六割を占める生活習慣病の予防は非常に大切であります。
そこでまず、生活習慣病の実態とその予防についてお伺いいたします。
◯杉村保健政策部長
生活習慣病としての代表的な疾病は、糖尿病、高血圧、高脂血症などでございまして、例えば、糖尿病が疑われる人は、国の実態調査によりますと、全国において、平成九年度千三百七十万人から平成十四年度は千六百二十万人へと増加をいたしております。
これらの疾病は、重症化により心臓病や脳卒中などを引き起こすこととなります。発症の要因には、不適切な食生活や運動不足が深くかかわっております。このため、生活習慣病の予防のためには、日常生活の中で適切な運動、栄養、休養を身につける取り組みが極めて重要でございます。
また、疾病を早期に発見し、治療に結びつけるため、各種の健康診査を実施いたしております。健康診査には二つの仕組みがございまして、一つは勤務先事業所が会社員等に行う職域の健康診断でございまして、もう一つは区市町村が老人保健法に基づいて専業主婦や自営業者などに行う基本健康診査でございます。
◯早坂委員
東京都における健康診査の受診率は、平成十六年度は六二・一%、毎年増加傾向にあります。ただ、受診率が向上しても、健康診査の結果、生活習慣病の疑いがあるとして、専門的な指導あるいは医療的な対応が必要と判断された際に、効果的な対応ができなければ無意味であります。私の仲間でも、赤信号がともった人に限って、お医者さんに行くとお酒が飲めなくなるからといって、余計お医者さんに行かなくなる、こういう人もいるようであります。自己責任とはいいつつも、行政として何らかの対応が必要かなとも思います。
健康診査で生活習慣病の疑いがあった場合の対応についてお伺いいたします。
◯杉村保健政策部長
基本健康診査におきましては、生活習慣病のおそれがあったときに、健診結果の説明にあわせ、医師が個別に指導を行っているほか、区市町村の保健師等が実施しております健康教育、健康相談の中で、適切な生活習慣の改善指導を実施いたしております。
また、都におきましては、要指導とされた方に継続的な指導を行うため、健診を行いました医師や区市町村の栄養士等が適切な指導を行います生活習慣改善指導推進事業を実施しております。
なお、基本健康診査の結果、要医療と判定された者につきましては、医療機関で必要な検査、治療が行われることになります。
◯早坂委員
健康づくりは、個人の自覚と実践が基本であり、都民一人一人が健康の自己管理に取り組むべきでありますが、そうした取り組みを支援するのが行政の役割であります。健康の自己管理を徹底するためには、幼少期からの自分の健康診断のデータなどを一貫して保有して、それに基づいて健康づくりの取り組みを行うことが有効だと考えます。そのため、生涯の健康情報を一元化することが必要だと考えますが、東京都のご見解をお伺いいたします。
◯杉村保健政策部長
ただいまご指摘がございました、生涯を通じた継続的な健康支援、一元化の問題につきましては、極めて重要であると考えてございます。現在、年齢や職業などで、健康診査や保健指導の制度は異なっており、これらの制度間の連携が課題となっております。国におきましては、健康診査のあり方など、今後の生活習慣病対策の推進について検討がなされておりまして、こうした動向を踏まえながら、今後、都としても、地域保健と職域保健との連携などを積極的に進めてまいります。
◯早坂委員
高齢化の進行に伴う国民医療費の増大、また介護保険給付費についても、制度発足以来、一貫して増加しています。生涯を通じて都民の健康づくりを支援し、かつ社会保障制度に係る将来世代の負担を軽減するためには、東京都として健康づくり施策を充実させるべきだと考えます。今後の施策展開についてお伺いいたします。
◯杉村保健政策部長
都民の健康づくりを一層推進するためには、生活習慣病の早期発見、早期治療といった二次予防の充実に加えまして、委員ご指摘のとおり、都民一人一人の主体的な健康づくりを社会全体で支援し、生活習慣を改善していくことが重要だと考えてございます。
都といたしましては、都民が正しい生活習慣を身につけ、健康づくりに取り組めるよう社会全体で支援するため、行政や民間団体が相互に協力、連携する仕組みとして、今年度中に東京都健康づくり応援団を発足する予定でございます。
また、都における健康づくりの基本計画でございます、東京都健康推進プラン21につきまして、現在、後期五カ年に向けて、中間評価・改定の検討を行っているところでございまして、この中で具体的な取り組みを位置づけてまいります。
◯早坂委員
ありがとうございました。