2010.03.05 :平成22年厚生委員会
「貧困者支援」

早坂委員 

 我が都議会自民党は、昨年十一月十六日、石原知事あてに厳しい経済環境と都民の雇用不安への対応を求める緊急要望を提出いたしました。そのことを踏まえ、東京都緊急雇用創出事業臨時特例基金条例について伺います。そもそも、国が支出するこの基金の目的はどのようなものか伺います。

〇永田生活福祉部長 

 緊急雇用創出事業臨時特例基金は、離職を余儀なくされた非正規労働者、中高年齢者等の失業者に対しまして、つなぎとしての一時的な雇用機会を創出する目的で、国が合計四千五百億円を都道府県に交付し、造成したものでございます。
 今回、現下の厳しい経済雇用情勢の中、求職中の貧困、困窮者に対する支援をさらに強化するため、国は、補正予算によって七百億円をこの基金に追加交付することとなってございます。
 都では、平成二十一年三月に基金を造成いたしまして、これまで国から約二百十四億円の交付を受けてございますけれども、今回新たに住まい対策のための経費といたしまして約八十億円の交付を見込んでいるところでございます。

早坂委員 

 では、今回のこの条例の改正のポイントはどういうところにあるかについて伺います。
〇永田生活福祉部長 

 今回の改正のポイントでございますけれども、基金を活用して実施できる事業は、住宅手当の拡充、生活保護受給者等に対する就労支援の強化、ホームレス対策事業の充実、生活福祉資金貸付事業における相談体制の充実の四つの事業でございまして、いずれも十分の十の国の補助事業として、区市や社会福祉協議会等がこれまで行ってきた事業でございます。
 基金で事業を実施するため、年度が変わっても切れ目のない事業実施が可能になること、また国の交付決定が不要となるため、ニーズに応じて迅速な事業実施が可能となることといった利点がございます。

早坂委員 

 昨年五月、当時の麻生内閣のもとに、新しいセーフティーネットが国の補正予算により創設をされました。これは、雇用保険という第一のセーフティーネットから抜け落ちた人を最後のセーフティーネットである生活保護に陥る手前で受けとめて支援を行うものであります。この新しいセーフティーネットは、第一のセーフティーネットである雇用保険の次という意味で、第二のセーフティーネットと呼ばれております。
 では、この第二のセーフティーネットと今回の基金の関係について伺います。

〇永田生活福祉部長 

 第二のセーフティーネットは、離職によって住宅等にお困りの方が生活保護を利用することなく、住宅の確保の支援、継続的な生活相談支援とあわせた生活費の貸し付け等を行い、生活を安定させながら一刻も早く就職できるよう支援していくものでございます。
 今回の条例改正に係る基金に積み増しします国の交付金は、第二のセーフティーネットのうち、昨年十月から開始をいたしました住宅を喪失または喪失するおそれのある方に対しまして、賃貸住宅の家賃相当分を給付する住宅手当制度を引き続き実施するための経費に充てられます。
 また、失業等により日常生活全般に困難を抱えている方に対しまして、生活福祉資金の貸し付けを行う区市町村社会福祉協議会に相談員を配置するなど、相談支援体制を充実するための経費に充てられるものでございます。
 都は、実施主体でございます区市や社会福祉協議会等に対しまして、基金を活用して第二のセーフティーネットが一層有効に機能するよう働きかけてまいります。

早坂委員 

 今回の条例改正には、第二のセーフティーネットに関する事業、すなわち生活保護に行き着く前の施策が含まれているというご説明でありました。
 ところで、東京都は、国の要請を受け、昨年末から三週間にわたり、いわゆる公設派遣村を設置いたしました。正しくは、年末年始の生活総合相談というそうでありますが、この本来の目的は、住居がなく、都内に生活実態があり、ハローワークで求職していたが、仕事が見つからずに年末を迎えた生活困窮者への相談支援だと理解をしています。
 では、この相談を何人が利用し、それを何人で対応したのか伺います。

〇庄司生活支援担当部長 

 ただいま理事がお話しのとおり、東京都は国からの強い協力要請を受けまして、住居を失い、貧困、困窮状態にある方への緊急支援といたしまして、人道的な見地から宿泊と食事の提供とともに、就労相談、生活住宅相談、健康相談などを行いました。
 年末年始の生活相談で、国の大規模宿泊施設におきまして、十二月二十八日から一月四日までの間に行った相談につきましては、入所者合計八百六十人の利用がありまして、相談業務に従事した職員は、実数で七十三人、延べ二百二十六人でございました。

早坂委員 

 八百六十人の利用があったということでありますが、この相談において第二のセーフティーネットの一つである住宅手当の申請者は何人だったのか。また、最後のセーフティーネットである生活保護の申請をした人は何人いたのか伺います。

〇永田生活福祉部長 

 住宅手当の申請者でございますけれども、二十九名でございます。生活保護の申請者は四百九十七名となってございます。こうした結果となりましたのは、第二のセーフティーネットである住宅手当が支給要件や申請手続などで利用しにくい部分があり、その機能を十分に発揮できていないといわざるを得ないと考えてございます。
 このため、都は、この年末年始の生活保護相談の結果を踏まえまして、本年二月五日、セーフティーネットの強化に向け、厚生労働省に対しまして、住宅手当の支給要件の緩和や利用しやすい体制づくりなどの緊急提言を行ったところでございます。
 国は、この提案内容も一部取り入れまして、住宅手当について収入要件の緩和や求職活動要件の強化など、本年四月一日から制度の見直しを行うとしてございます。

早坂委員 

 いわゆる公設派遣村は、個別の相談、支援が本来の目的であったはずですが、結果的には、単にベッドと食事を提供するだけの場になってしまい、第二のセーフティーネットとしての機能は十分に果たされていなかったように感じます。
 働く能力のある人には働いてもらい、生活保護を受けなくて済むような生活環境に誘導することこそが大切であります。したがって、年末年始に例えば日雇いの引っ越しの仕事がなくなるのであれば、それにかわる仕事、例えば公園のお掃除などを行政がつくるべきであります。生活に困っているからといって、ただお金を給付していてはだめで、働いた見返りとして報酬を渡すのが真っ当な姿であるし、その方が結果的に行政の支出も安く抑えられるものと思います。
 雇用の状態を分類するならば、働いている人、働く意欲はあるが仕事がない人、働く意欲がない人の三つに分けられます。二番目の働く意欲はあるが仕事のない人に対しては、仕事をつくり、働いてもらって、決して生活保護を受けるような状態にはさせないこと。三番目の働く意欲がない人に対しては、個別の丁寧な対応で働く意欲を持ってもらうようにすること。そして、生活保護を脱却してもらう、あるいは生活保護すらも受けていないホームレス状態から抜け出してもらうこと、これがあるべき姿だと考えます。
 このことは何も年末年始に限られたことではありません。年間を通じて働ける人には、その意欲を喚起し、就労に結びつけるような支援を実施していくことが必要なのはいうまでもありません。
 ところで、今回の基金への積み増し分には、生活保護を受けた人が就労し、生活保護からの脱却を支援するための応援をする就労支援員の増員の経費も含まれています。そこで、就労支援員のこれまでの配置状況と支援実績について伺います。

〇永田生活福祉部長 

 就労支援員は、福祉事務所に、ハローワークのOB等の就労支援の専門的な知識を有する職員を非常勤雇用または外部委託によりまして配置をいたしまして、就労支援員等活用プログラムに基づきまして、被保護者に対し、求職相談、ハローワークへの同行など、就労支援に向けた取り組みを実施しているところでございます。
 平成十七年度から配置をしておりまして、平成二十年度は四十区市で七十六名が配置をされてございます。また、平成二十年度の支援実績でございますけれども、五千七百四十三名の方に支援をいたしまして、千九百四十一人の方が就職に結びついてございます。

早坂委員 

 私は過日(2009.10.29)の厚生委員会で、セーフティーネットからトランポリンへという考え方を紹介しました。家がなく、食べ物がないという生活困窮者に地面すれすれのところで、はい、どうぞと支給し続けるのではなくて、精神的、肉体的、経済的活力を取り戻すまでの間だけ生活保護を受けてください。でも、それは早く終わりにして、トランポリンのように、もう一度自分の力でかつての暮らしのレベルまで、すなわち地面から高いところにまで戻ってきてもらうということが大切だという考え方であります。そのために何よりも必要なのは、雇用の充実であります。
 その文脈からいえば、先ほどご答弁いただきました住宅手当について、就職活動要件を強化するのは当然のことであります。住宅を新たに確保する場合に、毎月の家賃は住宅手当で給付され、敷金、礼金などの初期費用は、総合支援資金から借りることになっていますが、例えば住宅手当の支給期間内に就職できた場合には、借り入れた資金の返済を免除するようなインセンティブを設けてもいいと考えます。
 一方で、住宅手当の支給期間は最長でも九カ月間と限定されており、例えば本当に九カ月間で自立できるのかどうか、今後、実情を精査して、さらなる要件緩和を国に求めていくことも検討していただきたいと思います。
 最後に、求職中の貧困、困窮者などに対し、支援にどのように取り組んでいるのか伺います。

〇永田生活福祉部長 

 今般の厳しい経済雇用情勢の中で、働く意欲がありながらも就職できず、生活に困窮している方々に対しまして、一刻も早く就職し、生活を安定させるよう支援していくことは重要な課題だというふうに認識してございます。
 今後とも、第二のセーフティーネットを有効に活用いたしまして、ハローワークや区市町村など関係機関、庁内各局とも密接に連携をしながら、離職者等の就職と生活の安定に向けて積極的に支援をしてまいります。

早坂委員 

 経済雇用情勢が好転するまでの間、恐らくこれからも厳しい状況が続きますが、今ここで最後のセーフティーネットである生活保護に安易に流れてしまえば、社会全体がモラルハザードを起こし、我が国全体の活力が失われかねません。
 現に、台東区では、生活保護費が平成二十二年度一般会計の二割を超えるまでに膨れ上がっており、国全体では百八十一万人が生活保護を受けています。東京都は、既に国に対し緊急提案をしていますが、今後とも現場感覚の中で豊かな発想力を養い、みずから効果的な施策を立案、実施するとともに、国を突き動かしていくようお願いをいたします。