2006.03.20 : 平成18年厚生委員会 本文
「腎臓病対策(人工透析)」
◯早坂委員
腎臓病対策、人工透析についてお伺いいたします。
腎臓には、体内の老廃物を尿として排せつさせるろ過機能や、余分な水分を尿として排せつさせる水分調整機能などがあります。この腎臓が機能しなくなった場合に、血液を一分間に二百ccのペースで一たん体の外に出し、ポンプの力で、ダイアライザーと呼ばれるろ過装置を通して体外循環させることによって、腎臓本来の役割を代替させるのが人工透析でございます。これが機能しないと尿毒症になり、一週間から十日で死に至ります。
人工透析は通常二日に一回、一回当たり四時間が必要だとされています。本来、二日なら四十八時間休みなく動いているはずの腎臓の機能をわずか四時間で代替させるために、大量の血液を体の外に出すのですから、透析は心臓に大変な負担がかかります。透析患者は障害者手帳の一級に指定されています。人工透析は死ぬまで治療を受け続けなければならない終生医療であります。つまり、死ぬまでの間永遠に、二日後に受ける人工透析の時間と場所のアポイントメントをとり続ける必要があるのです。
では、何が原因でこの人工透析を受けるようになるのでしょうか。また、現在都内にどれくらいの透析患者が存在し、行政としてどのような支援策を設けているのか伺います。
◯杉村保健政策部長
まず、人工透析を受けるようになる原因でございますが、糖尿病あるいは慢性腎炎などがございます。最近では、新たに透析を受ける患者さんの四割以上が糖尿病が原因といわれております。
次に、都内の患者数でございますが、日本透析医学会の資料によれば、平成十六年末で二万四千百三十六人となっております。
また、支援策についてでございますが、都は、特殊医療費助成制度や心身障害者医療費助成制度といたしまして、医療保険における自己負担分について助成を行っているところでございます。
◯早坂委員
人工透析を受けたその日は、体がぐったりして帰宅するのも大変だと聞きます。透析患者は、尿が全く出ないか、出てもほんのわずかで、したがって、ごく少量の水しか飲んではいけない、低たんぱく高カロリーの食事が必要など、健常者と正反対の厳しい食事制限が必要です。燐やカリウムを含んだ果物、海藻、生野菜など、健常者にとって体にいい食事はすべてだめであります。
先ほどのご説明にもありましたが、透析導入患者の半数近くが糖尿病からの悪化によるものであります。腎臓病予備軍は都内におよそ百万人ともいわれています。さらなる透析患者の増大抑止には、糖尿病性腎症の知識普及や予防管理体制の強化が必要だと思いますが、これに対する東京都の取り組みについて伺います。
◯杉村保健政策部長
糖尿病性腎症を予防するためには、その原因でございます糖尿病を予防するとともに、糖尿病の重症化を防ぐことが必要でございます。このため、区市町村におきましては、老人保健法に基づきまして、健康教育、健康相談、基本健康診査を実施いたしまして、糖尿病の普及啓発や早期発見に努めております。
また、都におきましてもホームページ等によります普及啓発を行うとともに、生活習慣改善指導推進事業、糖尿病予防自己管理支援モデル事業、あるいは人材の養成などを通じまして区市町村を支援いたしております。
さらに、疾病別に医療連携システムの構築を進めている中で、一部の地域では糖尿病を取り上げ、保健所が地区医師会や中核病院と連携いたしまして、糖尿病の発症予防や症状の適正管理による進行抑制に取り組んでいるところでございます。
◯早坂委員
想定される首都直下地震が現実のものになった場合に、透析患者は、地震そのものからの直接の被害を免れたとしても、災害時における透析治療体制が整備されていなければ、莫大な数の二次的な犠牲者になり得る可能性があります。ダイアライザーとそれを動かすための電気、そして透析用と消毒用に一回当たり百二十リットルもの水が必要です。災害時においても、人工透析を行っている四百近い医療機関すべてに、これを供給するのが望ましいのはいうまでもありません。とはいえ、非常事態においては、これに対する一〇〇%の対応が現実的には極めて困難だろうこともまた想像にかたくありません。最も必要なのは、二日後の透析をどこで受けられるかという情報なのであります。
そこで、平成十六年の新潟県中越地震における被災地での透析患者への対応と現在の東京都の準備体制についてお伺いいたします。
◯杉村保健政策部長
新潟県中越地震におきましては、透析施設の被災情報や患者情報の把握など、関係機関による情報の共有化ができたことが円滑な透析医療につながったといわれております。
都では、平成九年に災害時における透析医療活動マニュアルを作成したところでございますが、現在、新潟県中越地震の教訓を踏まえまして、専門家のご意見を伺いながら、より実践的な内容に見直しを行っているところでございます。
また、都内では、災害時の地域情報ネットワークが多摩地域において構築されておりましたが、今回のマニュアル改訂を契機として、関係者のご努力により特別区内にも構築され、これによって、透析医療機関が連携する都内全域のネットワークが完成しました。都も本年一月、これらネットワークのメーリングを活用したシステムに参画したところでございまして、災害時にはどこの医療機関で透析が可能かなど、迅速に広域的な情報収集や緊密な情報交換を行い、円滑な透析医療の確保を図ってまいります。
今後、関係機関との合同の訓練を行うなど、より一層連携を強化してまいりたいと考えております。
◯早坂委員
災害時における東京都の備蓄食料はアルファ化米とおかゆですが、先ほど申し上げたとおり、透析患者には厳しい食事制限があります。現在備蓄されている味つけの濃いアルファ化米は、塩分、カリウム、燐が高過ぎて食べられません。また、おかゆは水分過多とエネルギー不足になるおそれから、これもまた食べられません。もちろん、災害時の非常食の確保は自助努力によってなすべきことは、健常者も透析患者も同じです。しかし、それだけでは不十分だとして、行政の役割として一定数の備蓄食料を確保しているのですから、そこには、健常者だけでなく透析患者向けのものが一定数用意されているべきだと思います。
現在備蓄されているアルファ化米を、今後、一定数低たんぱく米に切りかえていくことは、健常者も食べられるし、有効な手段だと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
◯朝比奈生活福祉部長
都では、各区市町村において災害要援護者の特性に応じた日用品や食料の準備などの対策が行われるよう、区市町村向けに、災害要援護者への災害対策推進のための指針を作成するとともに、災害要援護者防災行動マニュアルの指針において、各家庭での三日間の備蓄を推奨しているところであります。
ご提案の低たんぱく米の備蓄につきましては、透析患者への効果的な供給の方法などの課題もあり、どのような対応が適切か、関係機関等とも連携しながら検討してまいります。
◯早坂委員
ありがとうございました。都内で二万五千人といわれる透析患者の命を守るため、東京都のさらなるご努力をお願いいたします。